道路工事や工場などの場でよく使われているこの文言、誰しも一度や二度は見かけたり、また耳にしたことがあるかと思います。



実は、正確にはことわざではなく交通安全協会が募集している現場作業の標語です。
あまりにも有名で、馴染み深いために最近では“新しいことわざ”として一部の辞典でも扱われています。

事故を防ぐために必要な手間はごく些細なものだが、それを怠ると重大な結果につながる、という意味ですね。

早いうちに手を打てば大事(大事)にならずに済む。

という意味では、「後悔先に立たず」や、「転ばぬ先の杖」に近いニュアンスですね。

英訳すると、
“Caution does no harm.” (注意は害を及ぼさない)
といった表現ができるのですが、「注意一秒、怪我一生」にぴったり当てはまるイギリスのことわざがあるんです!

“A stitch in time saves nine.”
(時宜《じぎ》を得た一針は九針を省く/今日の一針、明日の九針)
時宜(じぎ)とは適した時という意味で、綻(ほころ)びは小さなうちに繕(つくろ)えば、さほど手間もかけずに済むが、放置しておくとどんどん大きくなってしまう・・・
ゆえに問題は小さなうちに、また早いうちに対策を講じよう、ということですね。

stitch は、縫い物や手術のときの一針の意味です。

Son: I have not done my homework yet, but there is a TV show coming up I really want to watch.
(宿題をしていないけど、見たいテレビが始まっちゃうよ。)

Mother: You should do it now. A stitch in time saves nine!
(今のうちに済ましておいた方ががいいよ。“今日の一針、明日の九針”というじゃないか。)

ちなみに“A stitch in time saves nine.”の中の time と nine は rhyme(韻《いん》)を踏んでいますね。
日本のことわざ同様、英語のことわざにも韻を含むものがいくつもあるようです。

外れかかったボタンを見つけても縫い付けるのを後回しにしていたら、気付いた時にはボタンごと無くなっていた・・・
なんてことありませんか?